大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)442号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意書は「本件犯罪事実窃盗ノ點ハ白鹽ヲ公定價格ヲ超エテ賣却シテ利益ヲ得ントシテ窃取シタルコトハ記録全體ニ徴シ寔ニ明ラカナル處ナリトス果シテ然ラハ物價統制令違反トシテ處斷スヘキモノニシテ刑法第四十八條ヲ適用スヘキモノニアラス然ルニ原審判決ハ右刑法第四十八條ヲ適用シタルハ失當ニシテ法令ニ違反スル判決ナリトス依ッテ原判決ヲ破棄シ罰金刑ニ處セラルヘキモノト信ス即チ本件犯罪事実ノ窃盗ノ點ハ公定價格ヲ超ヘテ賣却シテ利益ヲ得ントスル行爲ト公定價格ヲ超ヘテ賣却シタル行爲ハ其性質ニ於テ手段結果ノ關係アルヲ以テ物價統制令ノ一罪ヲ以テ處斷スヘキコト自明ノ理ナリトス」と言うのであるが

刑法第五十四條第一項に言う犯罪の手段たる行爲とは犯罪の性質上その手段として通常用いらるべき行爲を言うのである。ところで本件で假に所論のように被告人が原判示認定の白鹽を統制額を超えて販賣する目的で窃取したものであったとしても、右の窃盗は物價統制令違反の所爲についてその手段として、通常用いらるべき行爲であるとは言えないから原審が右二個の行爲を牽連關係にあるものと認めないで併合罪として處斷したのは正當で原判決には何等所論のような違法はない。論旨は理由がない。

仍て刑事訴訟法第四百四十六條により本件上告は理由がないものとして主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例